【注意】
鑑賞した後、勢いで書いたものを少しずつ修正した、鮮度高めの感想です。ネタバレ注意です。
また、個人的感想が含まれていますので、念のため閲覧注意です。内容が内容なので文章はかため、長めです。
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2024年12月鑑賞。YouTubeのおすすめ動画にこのドキュメンタリー映画の予告編が出て、その内容が気になり鑑賞を決めました。公開して間もないことや、話題になっていること、席の数が少ないミニシアターで公開されていたことがあってか劇場内は満席でした。
統合失調症という名前は知っているものの私の周りに実際に発症した人は(恐らく)いないので、今回のドキュメンタリー映画で初めて、統合失調症を発症された(と思われる)方の、生の映像を観るということになりました。発症の原因は今現在も明らかになっていない。つまり誰にでも発症する可能性はある訳で、大事なのはやはり「発症した後、どういう対応をしたらよいか」になると思います。
現在は効果的な治療方法があり、完治とまではいかなくても症状が緩和することは見込まれます。その為、何かおかしいなと感じたら精神科に行くのは間違った判断ではないと思います。ただ、現在も精神疾患の方に対する偏見は存在しますし、精神病棟では患者を虐待する事件も起きています。このことから、病院に行くことを拒む人がいるのも事実です(それでも「私は」、一度は病院に行った方が良いと思っています。素人よりプロに任せた方が、幾分かは良いと思いますから)。
監督のご両親は娘さんが精神疾患とは認めず、入院や通院はさせないと判断しました。これは、その時代の精神科や精神疾患の見方やご両親の考え・想いから決断されたことであり、病院に行った方が良かったのではと思いながらも、第三者の私が簡単に「こうしたらよかったのでは」と言える立場ではありません。監督の、ご両親に対する訴え(病院に行かせること)は対応として間違っていないし、お姉さんを家に閉じ込めるという判断は「それはちょっと…」と正直思いつつも、ですよ。
個人的に印象に残っているのは4つ。まずは監督(弟)の呼びかけに無反応なこと。ここまで反応が無いのかと驚きましたが、お姉さんがどう思っていたのか、分かるはずもありません。少し反応があった時に監督が「ありがとう」と言ったのも印象的でした。2つ目はお姉さんが単身でアメリカに行ったこと。この行動自体に驚きを隠せないのですが、その行動に対してご両親が(映像の中では)怒りの感情を出していないことにも驚きました。いや、実際に保護された時には怒ったかもしれないですが、思い出話に近い状態で話すものですから。3つ目はお姉さんの怒号や叫び声。最早何も言えず。観る・聞くことしか出来ない状態なのです。ここまで至ってしまうのかと思いました。
そして4つ目が受診後の様子です。といいますか…本当に「ついに」なんですよね。南京錠をつけてまで閉じ込め、受診を拒否し続けて25年もかかっている訳ですから。
受診し、入院もして薬を処方してもらうのですが、お姉さんに少しずつ変化が訪れているのが目に見えて分かるのです。監督との会話が出来るようになっているのは大きな変化だと思いますし、なによりピースサインもする。イベントでお買い物したり花火を見たり…外出できるようになったのも大きな一歩です。治療前とのビフォーアフターが分かります。同時に、自分の娘を見守るご両親だって年をとるのに、受診せずにそのまま生活していたらどうなっていたんだろう…と不安になりました(実際、母親に認知症の疑いが出た時は「あぁ…」となってしまいました)。結果的に、受診したこと自体はよかったのではと思います。
最後に。父親が自分の判断について答えた時、改めて「これは第三者が介入できないものだ」と感じました。それと同時に「どうすればよかったか?」という問いが出てくる理由の一つにもなるのかなと思いました。第三者の、個人の勝手な想像に過ぎませんが、親という存在・立場や時代の違いから、確固たる想いがあったのではと。それを動かすことは監督(息子)でも困難だった。お姉さんを受診させるのに時間がかかったのも、その想いが阻んでいたのかもしれないのではと。でも、どんな想いがあったとしても、お姉さんの一生がこのようになったことは変えられない。だから「どうすればよかったか?」という問いが生まれる。
精神疾患は珍しい病気ではなく、むしろ「いつ、誰が発症してもおかしくない」ものです。また、統合失調症に関しては前述した通り明確な発症の原因は分かっていません。自分の家族が同じような状況に陥ったらどう対応したらいいか、この映画は考えるきっかけになるのです。監督が長年撮影したこの記録は、決して無駄にすべきものではありません。
※パンフレットは購入して良かったです。「ディレクターズ・ノート」と「姉と、家族と」は必見です。
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今回はこれでおしまい。